補足
マラッカ海峡東部に位置する島。古くから良質なスズの産地として知られている。そのため島でははるか北の国からもたらされた皿や器などが見つかる。
考察
ビリトゥン島はインドネシアのスマトラ島東方、バンカ島とカリマンタン島の間に位置する島である。島の地質を特徴づけるのが花崗岩と、それに伴って形成されたスズ鉱床で、現在も海岸には巨大な花崗岩の岩塊が点在する独特の景観が見られる。スズの採掘は島の歴史と深く結びつき、近代にはオランダ系企業による大規模な開発も行われた。こうした地質と鉱業の歴史は、現在のビリトゥンを代表する特徴の一つとなっている。
一方、島の周辺海域は古くから東西を結ぶ海上交通路でもあった。そのことを象徴するのが、1998年にビリトゥン沖で発見された9世紀の沈没船である。アラブまたはインド洋系の構造を持つ船からは、唐代の中国で作られた陶磁器を中心に6万点を超える品々が見つかった。積荷は中東方面へ運ばれる途中だったと考えられ、中国と西アジアを結ぶ長距離海上交易が9世紀には成立していたことを示す重要な資料となった。
旧来の説明では、スズの産地だったため北方から陶磁器がもたらされたようにも読めるが、両者を直接結びつけるのは慎重であるべきだろう。沈没船の陶磁器は交易船の積荷であり、ビリトゥンでスズと交換された品だったと確認されているわけではない。豊かな鉱物資源を持つ島であることと、国際的な海上交易路の近くに位置したこと。この二つを分けて見ることで、ビリトゥン島の地理と歴史がより明確になる。

