クエスト二部作「眠れるビーナス」#1
補足
ティツィアーノ作。前面に横たわるヴィーナスの視線はこちらに向けられ見る者を挑発するようである。足元で丸まる子犬は従順と貞節を、手に持つバラは愛を象徴している。貴族の館の洋服ダンスを探る侍女が、女神を世俗的に感じさせる。
考察
『ウルビーノのビーナス』は、ティツィアーノが1538年に描いた作品で、現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されている。裸婦は寝台に横たわり、見る者へまっすぐ視線を向ける。右手にはバラを持ち、足元の小犬は婚姻の忠実さを示す。背景では侍女が婚礼衣装を取り出しており、単なる神話画ではなく、結婚や夫婦生活を意識した作品として読むことができる。
ウフィツィ美術館は、この女性を婚礼儀礼「トッカマーノ」を前にした若い花嫁として説明している。古代の「恥じらいのヴィーナス」の図像を踏まえつつも、背景は16世紀ヴェネツィアの裕福な邸宅で、古代神話の女神が現実の生活空間へ置き換えられている点が特徴的である。古典古代の理想美と、当時の婚姻・愛・貞節という価値観が重ねられた作品といえる。
ゲーム内の依頼文では、カトリック社会では裸の表現が禁じられていたように語られるが、これはかなり単純化されている。ルネサンス期のイタリアでは古代文化の再評価により裸体表現が大きく復活し、『ウルビーノのビーナス』もその代表例である。ただし16世紀半ば以降、対抗宗教改革の流れの中で宗教画の裸体にはより厳しい節度が求められるようになった。問題は裸体そのものより、作品の用途や置かれる場所、見る者にどのような意味を与えるかだった。

