補足
黄金造りの、アラビア風ランプ。全体に美しいアラベスクが施されており、地金は18金である。ひんぱんに使われた形跡があり、これほどの物でありながら日用品だったようだ。
考察
イスラム世界では、ランプや燭台は単なる照明器具にとどまらず、高度な工芸技術を示す品でもあった。金属製品には鋳造、彫刻、打ち出し、象嵌など多様な技法が使われ、植物文様や幾何学文様、書道を組み合わせた装飾が発達した。16世紀のイランには、真鍮に細かなアラベスクや詩文を彫り込んだ大型のランプ台も残っている。
ただし、イスラム工芸で実用品として広く使われたランプや燭台の多くは、真鍮や青銅、ガラス、陶器などで作られていた。金は装飾や象嵌に使われることはあっても、18金そのものを地金にした日用品のランプという例は、今回確認した博物館資料では見つからなかった。豪華な宮廷用品や宗教施設の調度品であれば貴金属が使われる余地はあるが、日常的に頻繁に使われた純然たる金製ランプという設定には慎重に見る必要がある。
また、クエストではオスマン帝国の力によってアラビアに富と技術が集中したと語られるが、16世紀の状況はもっと複雑だった。バスラは1546年にオスマン勢力下へ入った一方、マスカットは1507年からポルトガルの支配を受けていた。ペルシャ湾とインド洋はオスマン、ポルトガル、イラン、地域勢力がせめぎ合う交易圏であり、工芸技術も一つの帝国から一方向に広がったわけではなかった。

