発見物情報
補足
ペロポネソス半島南部にある城塞都市遺跡。ギリシャ神話の英雄メネラオスの神殿やフレスコ画のある修道院、ビザンツ建築の聖堂など、多くの建築物が存在する。当初は単なる防衛拠点だったが、次第に発展して城塞都市を形成したようだ。
考察
ミストラは、ペロポネソス半島南東部、スパルタを見下ろす丘に築かれた中世の城塞都市である。起点となったのは1249年、アカイア公ギヨーム2世・ド・ヴィルアルドゥアンが丘の頂上に築いた城だった。その後1262年にビザンツ側へ引き渡され、しだいに南ギリシャにおけるビザンツ勢力の重要拠点へ成長していく。1348年からはモレアス専制公領の中心となり、政治だけでなく宗教・文化の面でも大きな役割を担った。
現在の遺跡には、城塞や宮殿跡だけでなく、数多くの教会・修道院が残る。聖ディミトリオス聖堂、アギオイ・テオドロイ、オディギトリア、アギア・ソフィア、ペリブレプトス、パンタナサなど、13世紀後半から15世紀にかけての建築が集まり、内部には後期ビザンツ美術を代表するフレスコ画が残されている。コンスタンティノープルの美術様式に加え、ロマネスクやゴシックの影響も見られ、14~15世紀のミストラが東西の文化の接点でもあったことが分かる。
一方で、ゲーム内説明にある「メネラオスの神殿」とミストラ遺跡を直接結びつけるのは難しい。ミストラそのものは13世紀以降に発展した中世都市で、トロイ戦争の英雄メネラオスの時代とは二千年以上離れている。スパルタ周辺にはメネラオスとヘレネを祀った古代の聖域が知られているため、ゲームではその古代伝承と、近隣に残る壮大な中世遺跡を一つの物語に重ねた可能性が高い。少なくとも、ミストラが「メネラオスの宮殿跡」だったと考える考古学的根拠は確認できない。
この発見物の面白さは、むしろそこにある。古代スパルタの英雄伝承を追っていたはずが、たどり着くのは後期ビザンツ世界を代表する城塞都市。『大航海時代 Online』では一つの場所に異なる時代の記憶が重ねられているが、実際のミストラも、城塞、宮殿、教会、修道院、街路が層をなして残る「時間の重なった都市」である。神話の舞台とは別物でも、ペロポネソスの歴史の厚みを感じさせる発見物としては非常に面白い。

