ディレム銀貨

『ディレム銀貨』を発見したゲーム画面

発見物情報

補足

ササン朝時代に製造された銀貨。
表面に「右向きの王の胸像」、裏面には礼拝に使用された「聖なる火」が刻まれている。

考察

ササン朝ペルシアでは、3世紀から7世紀にかけて銀貨が貨幣制度の中心を担っていた。代表的なものはドラクマ銀貨と呼ばれ、ギリシアに由来する貨幣単位の伝統を受け継いでいる。重さはおおむね4gで、広い領域に流通した。王朝の支配下にある各地の造幣所で発行され、経済活動を支えるとともに、王の権威を人々に示す役割も果たしていた。

銀貨の表面には、右を向いた王の胸像が刻まれることが多い。王は豪華な冠をかぶり、その形には翼や三日月、星など、統治者ごとに異なる特徴が見られる。冠の形状は王の識別に役立ち、現在でも貨幣の発行時期を調べる重要な手がかりとなっている。また、周囲には王の名や称号を表す中世ペルシア語の銘文が刻まれた。

裏面に描かれるのは、ゾロアスター教の信仰と結びついた聖火壇である。火は清浄さや神聖さを象徴する重要な存在であり、貨幣には燃える火を載せた祭壇と、その両脇に立つ人物が表現された。人物の姿や装飾は時代によって異なり、造幣所の名称や発行年が記されたものもある。こうした図像は、王権と宗教が深く結びついていたササン朝の社会を伝えている。

7世紀半ばにササン朝がイスラム勢力に征服された後も、銀貨の形式はすぐには失われなかった。初期イスラム時代のイランでは、従来の王の胸像や聖火壇を残しながら、新たな支配者の名やアラビア語の文言を加えた貨幣が発行された。こうした銀貨はアラブ・ササン朝貨幣と呼ばれ、後のディルハム銀貨につながる貨幣史の一段階を示している。

一枚の銀貨には、交換のための価値だけでなく、王朝の権威や信仰、さらには支配者が交代した後の社会の変化まで刻まれている。ササン朝の銀貨は、古代ペルシアからイスラム世界へと続く歴史を読み解くための貴重な資料なのである。

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