エイリアス エピソード(「私」と「彼女」)・占い道具編相関図を見る
補足
読みは「せんじりゃっけつ」。陰陽師・安倍晴明がまとめた書物の写本。式占の一種である六壬神課に関し、基本的な説明や占いの方法が記されている。
考察
『占事略决』は、平安時代の陰陽師・安倍晴明の著作として伝えられる、六壬式占の解説書である。書名は「せんじりゃっけつ」と読み、「占事略決」とも表記される。中国で発展した占術を日本の陰陽道の体系の中で理解するうえで、重要な文献となっている。
六壬式は、占う日時をもとに天と地の関係を読み取り、出来事の吉凶を判断する方法である。円形の天盤と方形の地盤を組み合わせた式盤の仕組みを利用し、十二支や月将、五行の関係を計算する。さらに四課三伝と呼ばれる手順で事態の推移を求め、十二天将を配して判断を進める。占いといっても、一定の規則に従う複雑な計算と解釈の体系だった。
『占事略决』には、こうした占術の基本から、病気、出産、待ち人、失せ物などを占う方法までが記されている。日常生活に関する問題も対象となっており、占術が宮廷の政治判断だけでなく、人々の生活に関わる知識でもあったことが分かる。
平安時代の陰陽寮は、暦の作成、天文現象の監視、時刻の管理、占術などを担う国家機関だった。安倍晴明もその官僚機構で活動した実在の人物であり、貴族の日記などに儀礼を行った記録が残されている。後世の説話では式神を操る超人的な陰陽師として描かれるが、史料から見える姿は、天文や占術の専門知識を持つ宮廷官人である。
『占事略决』の成立は平安時代中期に位置づけられ、晴明の著述として扱う研究もある。ただし、現存する写本は本人の自筆原稿ではない。京都大学附属図書館の清家文庫には、後世に筆写された一冊が所蔵されている。伝承上の著者名と、現在読める本文がどのように伝えられたかは区別する必要がある。
前作の「式盤」が天と地を表す占術の道具なら、『占事略决』はその操作と解釈を伝える知識の書物である。古代中国から伝わった暦や方位の思想が、平安日本の陰陽道として受け継がれた歴史を物語っている。

