アトラハシス叙事詩

『アトラハシス叙事詩』を発見したゲーム画面

クエストシリーズ「ギルガメシュ」#3

発見物情報

補足

古代メソポタミアの叙事詩。ギルガメシュ叙事詩と同様に洪水伝説の記述がある。洪水を免れ、生存した人間の名が「アトラ・ハーシス」とされている。

考察

『アトラハシス叙事詩』は、古代メソポタミアでアッカド語によって記された、人類創造と大洪水の物語である。現存する代表的な古バビロニア時代の写本は紀元前17世紀にさかのぼり、三枚の粘土板にわたる叙事詩として伝えられた。主人公アトラ・ハーシスの名には「非常に賢い者」という意味がある。

物語は、人間がまだ存在せず、下級の神々が過酷な労働を担っていた時代から始まる。労働に耐えかねた神々が反抗すると、知恵の神エンキらは、その負担を引き受ける存在として人間を創造する。神々の仕事を肩代わりするために人間が生まれるという発想は、天地創造を神の秩序ある営みとして描く『創世記』とは大きく異なる。

ところが、人間が増えるにつれて騒音が激しくなり、神々の長エンリルは安息を妨げられる。疫病や飢饉でも人口を抑えられず、ついには大洪水によって人類を滅ぼそうと決める。しかし、エンキはアトラ・ハーシスに災厄を知らせ、船を造って家族や動物を救うよう導いた。洪水を生き延びた主人公は神々へ供物を捧げ、神々は再び人類を絶滅させる洪水を起こさないことと、人口を制限する別の仕組みを定める。

この洪水伝承は『ギルガメシュ叙事詩』第11粘土板にも受け継がれている。そこでは生存者がウトナピシュティムと呼ばれ、死を恐れるギルガメシュに自身の体験を語る。人物名と物語上の役割は異なるが、船の建造、洪水、神々への供物などに共通する要素が認められる。

旧約聖書『創世記』のノアも、神の指示に従って箱舟を造り、家族と生き物を救う。ただし、ノアの洪水は人間の悪と神の裁きに結びつき、洪水後には神と生き物との契約が語られる。神々が人間の騒音に悩まされるアトラハシスの物語とは、その意味づけが異なっている。

三つの物語の類似は、古代西アジアで洪水伝承が受け継がれ、変化してきたことを示している。しかし、アトラ・ハーシス、ウトナピシュティム、ノアを歴史上の同一人物と確認できるわけではない。『アトラハシス叙事詩』は、神々と人間の関係、死と生存の意味を問い続けた古代の想像力を伝える作品なのである。

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