補足
キエフ大公国を治めたウラジーミル1世の肖像と紋章が彫られた金貨。ウラジーミル1世は、東ローマ帝国皇帝バシレイオス2世の妹と結婚し、キエフ大公国の権威を大きく高めるなど、政治的手腕に優れていた。
考察
ウラジーミル1世の時代には、キエフ・ルーシで「ズラトニク」と呼ばれる金貨が鋳造された。現存例はきわめて少ないが、表裏にはキリスト像、ウラジーミル自身の肖像、リューリク家を示す三叉状の標識などが刻まれている。重量や図像は東ローマ帝国のソリドゥスを強く意識しており、988年のキリスト教受容以後、ビザンツ世界との結びつきを政治的にも視覚的にも示す貨幣だったと考えられている。
ウラジーミル1世の大きな転機は、東ローマ皇帝バシレイオス2世との同盟だった。反乱鎮圧の軍事支援と引き換えに、皇帝の妹アンナとの結婚とキリスト教受容が結びつき、キエフ・ルーシは東方キリスト教圏へ深く組み込まれていった。皇帝家の女性との婚姻は当時としては非常に大きな政治的意味を持ち、ウラジーミルの権威を国内外に示す契機にもなった。
金貨も、この変化の延長で見ると面白い。単に経済活動のための貨幣というより、キリスト像と君主像を同じ貨幣に置き、ビザンツ的な王権表現を自国へ取り込んだ政治的メディアでもあった。現存するズラトニクには「ウラジーミル、玉座にあり」あるいは「これはウラジーミルの金」と読める銘文を持つ例があり、新たな信仰と君主権を同時に宣言する性格がうかがえる。
『大航海時代 Online』では「ウラジーミル1世の肖像と紋章が彫られた金貨」として登場するが、実在のズラトニクはそれ以上に、キエフ・ルーシがビザンツ文化を受け入れながら独自の王権を形成していく時代を象徴する遺物である。小さな金貨の中に、宗教改宗、皇帝家との婚姻、国際関係、そして新しい国家像が凝縮されているのである。

