コハウ・ロンゴロンゴ

木製の机に広げた宝の地図とコンパス

シリーズ「モアイ」の相関図相関図を見る

ラパ・ヌイ西岸で上陸。北のほう。

発見物情報

補足

ラパ・ヌイ独自の文字であるロンゴロンゴ文字を書きつけた板。名は「物言う木」という意味である。ラパ・ヌイ島民でも特殊な職業の者でないと読むことができず、解読できる者も年々減っているそうだ。

考察

コハウ・ロンゴロンゴは、南太平洋のラパ・ヌイ島に伝わる、謎めいた記号を刻んだ木製の文字板である。人間や鳥、魚、植物などを思わせる図形が整然と並び、ポリネシアでは極めて珍しい記録文化を伝えている。現在確認されている資料は30点に満たず、その多くが世界各地の博物館に保管されている。

「コハウ」は木材や木製の板を指し、「ロンゴロンゴ」は伝える、唱えるといった意味に関係する言葉である。そのため「物言う木」と意訳されることもあるが、名称の解釈は一つに定まらない。

この記号列には「逆牛耕式」と呼ばれる特徴的な配置が見られる。一行を左から右へ追い、端まで進んだところで板を180度回転させ、次の行を読む方式と考えられている。隣り合う行の記号が上下逆さまに刻まれているため、読む人は板そのものを回しながら記号を追ったことになる。

ロンゴロンゴは、祖先の系譜、神話、儀礼、暦などの知識を伝えるために使われた可能性がある。特にママリ板の一部には月の満ち欠けと関係する記号列があると考えられている。しかし、記号が言葉の音を表したのか、意味を示したのか、あるいは記憶を助ける役割を果たしたのかについては議論が続いている。

1864年、島を訪れた宣教師ウジェーヌ・エイローは、記号を刻んだ木板の存在を報告した。その前後、島の人々は奴隷狩りや感染症によって甚大な被害を受け、多くの知識と文化の継承が断たれた。後世の研究者が文字板を調べたときには、その内容を確実に読み解く手掛かりがほとんど失われていた。

成立年代も大きな謎である。2024年に公表された研究では、ローマに保管された4枚の文字板を放射性炭素年代測定し、そのうち1枚の木材が15世紀末から16世紀初頭に由来する可能性が示された。これはヨーロッパ人の来航以前に文字体系が成立していた可能性を考える重要な手掛かりだが、木材の年代がそのまま刻字の年代を示すわけではない。

現在もロンゴロンゴには、学術的に広く認められた完全な解読法が存在しない。残された記号は、ラパ・ヌイの人々が何を記録し、どのように知識を伝えていたのかという問いを私たちに投げかけている。

モアイが石に刻まれた祖先の記憶だとすれば、ロンゴロンゴは木に刻まれたもう一つの記憶である。その声を再び理解できる日は、まだ訪れていない。

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