クエストシリーズ「バベルの塔」#2
発見物情報
補足
ピーテル・ブリューゲル(父)作の、もう一枚のバベルの塔の絵。大きな絵と違い、建築の様子は描かれていない。なぜか全体が強い赤で描かれており、神の怒りで砕かれる前触れを思わせる。
考察
ピーテル・ブリューゲル(父)が描いた二つの《バベルの塔》は、同じ旧約聖書の物語を題材としながら、異なる印象を与える作品である。1563年に制作された大型版はウィーン美術史美術館に、後年の制作と考えられる小型版はロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館に所蔵されている。
小型版の大きさは縦約60センチ、横約75センチ。大型版の半分ほどの寸法だが、画面のほとんどを巨大な塔が占めている。大型版では塔の頂上を見下ろすような視点が用いられ、手前には建設を指揮する王ニムロドと思われる人物たちが描かれている。小型版ではその一団が姿を消し、視線を低く置くことで、塔そのものが圧倒的な存在感を放っている。
両作品の印象を決定的に変えているのが色彩である。大型版の塔は比較的明るい石造建築として描かれているが、小型版では赤褐色の煉瓦が画面を支配する。上部の煉瓦は鮮やかな赤を残し、下層ほど風化して色が薄くなる。これは神の怒りを直接描いたものではなく、建設の時間的な経過を色彩によって表したものと考えられる。
建築の構造にも違いがある。大型版の塔は巨大な天然の岩山を取り込んで築かれているのに対し、小型版の塔は人間の手だけで積み上げられた建造物として表現されている。そこには、人間の技術と野心が生み出した巨大な人工物という印象が強く表れている。
ただし、ゲーム内の「建築の様子は描かれていない」という説明は厳密には正しくない。小型版にも煉瓦や石灰を運ぶ人々、港から資材を運び込む船など、活発な建設作業が細密に描かれている。
X線調査では、小型版の下描きが大型版に近い構成だったことも判明している。ブリューゲルは同じ物語を単純に描き直したのではなく、構図や色彩を変えることで、人間が築き上げる塔の威圧感をいっそう際立たせたのである。

