クエストシリーズ「旧約聖書」#1
発見物情報
補足
旧約聖書第一の書。世界の起源や人類の創造、イスラエル民族の古い歴史の物語などで構成されている。
考察
『創世記』は旧約聖書の最初に置かれた書物であり、ユダヤ教では「トーラー」と呼ばれる五書の第一巻に当たる。ヘブライ語の書名は冒頭の言葉に由来する「ベレシート」、すなわち「初めに」を意味する。ギリシャ語由来の「創世記」という名称も、物事の起源を語る書物であることを示している。
全50章の内容は、大きく二つに分けられる。第1章から第11章までは天地創造からバベルの塔までを描く原初史である。神による世界の創造、アダムとエバの楽園追放、カインとアベル、ノアの洪水、そして人間の言葉が分かれた理由を語る物語が続く。世界の始まりを説明するとともに、人間の自由や過ち、神との関係を問いかける部分でもある。
第12章以降は視点が一つの家族へ移る。アブラハムが神の呼びかけに応じて故郷を離れ、その約束がイサク、ヤコブへと受け継がれていく。後半では、兄弟たちに売られてエジプトへ渡ったヨセフの物語が中心となり、一族がエジプトに移り住むところで終わる。これが次の『出エジプト記』への橋渡しとなる。
伝統的なユダヤ教・キリスト教では、五書の著者をモーセとする理解が受け継がれてきた。しかし、現代の聖書学では、神の呼び名や文体、同じ出来事を異なる形で語る記述などを手掛かりに、複数の伝承や文書が長い時間をかけて編集されたと考える研究が有力である。具体的な資料の区分や成立年代については、現在も議論が続いている。
天地創造や洪水の物語には、古代メソポタミアの『エヌマ・エリシュ』や『ギルガメシュ叙事詩』との類似が認められる。ただし、共通する物語の要素だけで直接の借用関係を確定することはできない。創世記は、古代オリエントの文化的環境の中で、独自の神観と人間観を形にした書物として読む必要がある。
世界全体の起源を語る壮大な物語が、やがて一つの家族の歩みへ収束していく。その構成こそが『創世記』の特徴であり、後に続く聖書全体の物語を支える土台となっている。

