冒険者はなぜ、書庫で何度も本を読むのか

大海原を駆け巡り、未知の遺跡を発見し、歴史に埋もれた財宝を探し出す。それが冒険者というものだ。少なくとも、私はそう思っていた。ところが最近、自分の行動を振り返ってみると、どうにも様子がおかしい。

港に着く。書庫へ行く。学者と話す。本を読む。地図を手に入れる。そして次の港へ向かう。……あれ? 私、ちゃんと冒険してる?

もしかして私は、世界を股にかける図書館通いなのではないか。

しかも、交通手段は自前の船。なんとも贅沢な図書館巡りである。よく考えたら、図書館に行くためだけに海を渡っているわけで、我ながらずいぶん熱心な読書家ではないか。

『大航海時代 Online』の書庫には、考古学や宗教学、美術など、さまざまな学問の本が並んでいる。本を読んでいると、思いがけず地図を発見することもある。つまり書庫というのは、知識の宝庫であると同時に、本物のお宝への入口でもあるわけだ。

なんて素晴らしい場所なのだろう。静かで落ち着いているし、学者も親切だ。これでお目当ての地図さえ出てくれれば、文句のつけようがないのだけれど。

一冊、また一冊。学者の目の前で、ひたすら本を読み続ける。そろそろ出てもいいんじゃないかな。いや、もう出てもいいと思う。というか、お願いだから出てください。

そして、ついにあの瞬間がやってくる。待ちに待った何かが画面に表示されたのだ。おおっ、とうとう地図が出たのか!

「頭が痛くなってきました」

出た! 地図じゃなくて頭痛が!

……そうだろうとも。こちらも頭が痛い。これだけ読んで、肝心の地図が一枚も出てこないのだから。しかも不思議なことに、あれほど熱心に勉強したはずなのに、何を読んだのかさっぱり覚えていない。

覚えているのは、地図が出なかったという悲しい事実だけだ。これでは学問を修めているのか、ただひたすら運試しをしているのか分からない。まあ、明日も同じことをするのだけれど。

それにしても、世界各地の学者たちは実に親切である。どこの書庫を訪ねても、こちらの質問に付き合ってくれる。古代の王国、失われた都市、遠い国の伝承。何を尋ねても、何かしら手がかりを教えてくれるのだからありがたい。

ただし、この親切には少々困ったところがある。親身になって話を聞いてくれるのはいいのだが、話の終わりに決まって不穏な気配が漂うのだ。

「詳しいことは、あちらの街で聞いてみるといいでしょう」

なるほど、分かりました! そうして船を出し、海を渡り、ようやく目的の人物を見つける。長い航海の末にたどり着いたのだから、今度こそ何か分かるに違いない。

「それなら、別の街に詳しい者がいますよ」

……え? また船に乗るの? 先ほどまでの航海は、いったい何だったのだろう。いや、きっと何か深い理由があるのだ。学問の世界というものは、そう簡単にはいかないのである。

それにしても、学者の皆さん。ひとつだけ、以前から気になっていることがあるのですが。

もしかして、冒険者を世界中に旅行させる秘密の組織でも作っていませんか。

さて、そんな書庫通いの途中で、ふと思ったことがある。昔の人たちは、今のように簡単に本を手に入れられたわけではない。むしろ、一冊の本を手にすること自体が大変だった時代もあるのだ。

ヨーロッパの中世には、印刷機で本が大量生産される以前、書写人が一冊ずつ手作業で文章を書き写していた時代があった。古い本を広げ、一文字ずつ丁寧に写していく。大英図書館には、そうした書写作業の様子を描いた中世の写本も残されているという。

想像してみてほしい。何日も、何週間も、ひたすら文字を書き続けるのである。誤字があれば直し、ページが進めばまた書く。私なら途中で頭が痛くなる自信がある。

……あれ? 結局、昔も今も頭痛なの?

それでも人々は本を書き写し、知識を次の世代へ伝えてきた。現代なら検索ひとつで見つかる情報も、当時は遠く離れた土地まで出向かなければ手に入らないことがあったのだろう。

そう考えると、冒険者がわざわざ遠い街の書庫を訪ねるというのも、なかなか味わい深いではないか。知識を求めて海を渡るなんて、ちょっと格好いい話である。もっとも、現実の書庫では、同じ本を何度も読んだからといって突然地図が飛び出してくるわけではない。

そこだけは、ゲームの世界で本当によかった。

さて、今日も新しい依頼を受けた。どうやら、古い書物について調べてほしいらしい。目的地は、もちろん書庫。……またですか。

いやいや、文句を言ってはいけない。知識を求める旅も立派な冒険なのだ。剣を振るうばかりが冒険ではない。誰かが残した知識をたどり、失われたものを探しに行く旅だってある。

そう思えば、書庫通いも悪くない。さあ、今日も元気に本を読もうではないか。気を取り直して本棚の前に立ち、いつものようにページをめくる。

一冊、二冊、三冊……。おや? なんだか頭が痛くなってきた。どうやら今日も、地図より先に頭痛の方が見つかったらしい。

先生、冒険者に必要なのは探索スキルより、頭痛薬ではありませんか。

いや、待てよ。頭痛薬を探すために、また別の街へ行けと言われたりして。それで今度は薬草を探しに遠くの陸地まで……。

……それだけは勘弁してください。

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