発見物情報
補足
古代ギリシャの女流詩人であるサッフォーの詩集。もとは9集あったと伝えられるが、美しい乙女への賛歌が多いため、不道徳とされて中世に多くが失われた。
考察
サッフォーは紀元前600年頃、レスボス島で活動した古代ギリシャの詩人である。恋愛、結婚、家族、神々への賛歌など幅広い題材を歌い、とりわけ女性への恋情を率直に表した作品で名高い。ヘレニズム期のアレクサンドリアでは、その作品が八~九巻ほどのパピルス巻物に編集されていたとされ、総量は1万行前後に達した可能性がある。ところが現在まとまって残る作品はごくわずかで、完全な形で伝わる詩もほとんどない。
ゲーム内の説明では、サッフォーの詩が「美しい乙女への賛歌が多いため不道徳とされ、中世に多く失われた」とされている。しかし、作品消失の原因を道徳的な弾圧や禁書指定だけに求める根拠は乏しい。古代には彼女の詩は広く読まれ、2~5世紀頃の引用やパピルス断片も多数残っている。その後、パピルス巻物から羊皮紙の冊子へと書物の形が変わる中で、繰り返し書き写されなかった作品が失われていったとみられる。古代ギリシャ語のアイオリス方言が後世の読者にとって難しかったことも、伝承を細らせた要因として挙げられる。
「サッフォーの九巻が教会によって焼かれた」といった話は後世によく語られたが、確実な史料で確認できる出来事ではない。むしろ彼女の作品は、後代の著者による引用と、エジプトの乾燥地帯から出土したパピルス断片によって少しずつ姿を取り戻してきた。失われた大部分を「禁書になったから」と説明するより、古代文献の伝承そのものが極めて脆かったことを示す代表例と見る方が、現在の研究には近い。

