クエストシリーズ「戦史と秘史」#2
発見物情報
補足
東ローマ帝国の名将ベリサリウスに仕えた書記官であるプロコピオスの著作。
当時の皇帝であったユスティニアヌス1世の治世や皇后テオドラの女傑ぶり、武将としてのベリサリウスの活躍などが記されている。
考察
『プロコピオスの戦史』は、6世紀の東ローマ帝国で活動した歴史家プロコピオスが著した全8巻の歴史書である。プロコピオスはパレスチナのカエサレア出身で、527年頃から名将ベリサリウスの法律顧問兼書記官として仕えた。将軍に同行して各地の戦役を経験したことから、単に過去の出来事をまとめた歴史家ではなく、戦争の現場を知る同時代の証言者でもあった。
『戦史』が扱うのは、ユスティニアヌス1世の時代を中心とする帝国の対外戦争である。最初の2巻はササン朝ペルシアとの戦争、続く2巻は北アフリカのヴァンダル王国との戦争、残る4巻はイタリアの東ゴート王国との戦争などを記録している。特にベリサリウスの遠征については、軍の行動だけでなく、戦場の状況や外交交渉、周辺地域の人々の暮らしにも記述が及ぶ。帝国がかつてのローマ領を取り戻そうとした時代を知るうえで、欠かすことのできない史料となっている。
興味深いのは、プロコピオスが同じ時代について、性格の大きく異なる著作を残したことである。『戦史』では比較的抑制された筆致で戦争を記録する一方、『秘史』ではユスティニアヌス帝や皇后テオドラ、ベリサリウスとその妻アントニナを激しく批判している。さらに『建築について』では、皇帝が進めた建設事業を称賛した。同じ著者による作品とは思えないほど評価が異なるため、執筆目的や公表を想定した読者の違いも考慮する必要がある。
『秘史』の過激な記述をそのまま史実として受け入れることはできないが、『戦史』も完全に中立な記録ではない。古代の歴史書には、人物の演説を再構成したり、出来事を文学的に描いたりする伝統があった。プロコピオスの記述も、著者の立場や政治的な判断を踏まえて読む必要がある。
ゲーム内説明ではユスティニアヌス帝やテオドラの姿にも触れているが、皇后や宮廷の内幕を扱った刺激的な逸話は、主に別著『秘史』との関係で知られている。『戦史』の価値は、ベリサリウスの活躍を伝えるだけでなく、帝国の政策と戦争を、それに関わった人物の視点から記録したところにある。勝利の物語の背後にあった混乱や苦難まで読み取れる、古代末期を代表する歴史書なのである。

