クエスト二部作「戦車」#1
発見物情報
補足
古代メソポタミアの都市国家シュメールで発明された戦車。四輪で車輪に輻がなく、ろばが牽く車体に乗った御者が槍を振り回して戦う。
考察
シュメール世界では紀元前3千年紀に車輪付き車両が使われており、その姿をよく伝える資料がウル王墓出土の「ウルのスタンダード」である。紀元前2550~2400年頃の戦闘場面には、四輪の車両が敵兵を踏み越えながら進む様子が描かれている。車輪はスポークを持たない厚い円盤状で、後世の軽快な二輪戦車とはかなり異なる。重量のある構造だったため、速度よりも威圧力や戦場での機動、指揮官の移動などに向いた車両だったとみられる。
牽引している動物も、ゲーム内説明の「ろば」だけでは少し単純である。ウルのスタンダードについて大英博物館は、四頭のオナガー、つまり野生ロバ系のウマ科動物が車両を引いていると説明している。またウル王墓から出土した手綱用の金具にはロバまたは野生ロバを表した像が付き、牛に牽かせたそり状車両の例も確認されている。初期メソポタミアでは、現代の馬車を思わせる単一の形式ではなく、複数の牽引動物と車体が使い分けられていた。
さらに、車上の人物が「槍を振り回して戦う」と断定するのも慎重にしたい。ウルのスタンダードでは車両と歩兵が同じ戦闘場面に描かれるが、車上戦闘の具体的な方法までは一枚の図像だけで決めにくい。ゲーム内の説明は初期シュメールの軍用車両像をうまく要約している一方、後世の戦車と同じ感覚で見ると誤解が生じる。むしろ、戦車史のごく初期段階にあった重い四輪車両として捉えると、その特徴がよく見えてくる。

