発見物情報
補足
20m近くにもなる、大型のクジラ。頭部が大きく、口には硬い歯が並んでいる。巨大なイカと戦っている姿が目撃されたこともあるという。船を襲ったりはしないようだ。
考察
マッコウクジラは、学名をPhyseter macrocephalusという、現生最大のハクジラ類である。成熟したオスは全長16m前後に達し、ときには18mを超える個体もいる。体長のおよそ3分の1を占める巨大な頭部と、細長い下顎が特徴だ。下顎には大きな円錐形の歯が並び、上顎の歯は通常、歯茎からほとんど突き出さない。
マッコウクジラは深海に潜って餌を探す。潜水は40〜50分程度に及ぶことが多く、水深千mを超えることもある。暗い海中では「クリック音」を発し、その反響を利用するエコーロケーションによって獲物の位置を把握する。巨大な頭部には鯨ろうを含む器官があり、音の発生と伝達に重要な役割を果たしていると考えられる。
主な餌は深海性のイカ類で、ダイオウイカもその一つだ。胃の中からダイオウイカの硬いくちばしが見つかり、体表にはイカの吸盤による傷痕が残ることがある。こうした証拠から両者の接触は確かだが、深海での捕食場面を人間が直接観察した例は極めて限られる。常に巨大なイカと死闘を繰り広げているわけではない。
社会性も発達しており、メスと子どもは長く続く母系の集団を形成する。仲間同士では「コーダ」と呼ばれる規則的なクリック音を交わし、群れや地域によって異なる音のパターンが受け継がれている。成長したオスは群れを離れ、より高緯度の海域まで広く移動する。
世界の深い海に分布し、大西洋のマディラ諸島周辺でも年間を通じて観察記録がある。かつては頭部の鯨ろうや体内の油を求めて盛んに捕獲され、灯火用燃料やろうそく、潤滑油などに利用された。商業捕鯨の衰退後も、船舶との衝突や漁具への絡まり、海中騒音などが脅威となっている。
通常は船を獲物として襲う動物ではない。ただし、歴史上には捕鯨船への衝突や沈没事故が記録されている。巨大な身体を持ちながら、音を頼りに深海で暮らし、複雑な社会を築くマッコウクジラは、今なお未知の多い海の生き物なのである。

