補足
レオナルド・ダ・ヴィンチ作の絵。聖アンナの膝にマリアが座り、幼いイエスを抱こうとしている。アンナはマリアの母であるが、ここではマリアと同じくらいの年齢で描かれている。この絵は未完成だそうだ。
考察
《聖アンナと聖母子》は、レオナルド・ダ・ヴィンチが1503年頃から晩年まで長く取り組んだ作品で、現在はルーヴル美術館に所蔵されている。画面には聖アンナ、その娘である聖母マリア、そして幼子キリストの三世代が重なるように描かれ、幼子は足元の子羊へ身を乗り出している。人物同士がほとんど一つの塊のようにつながる、非常に独特な構図である。
特に目を引くのは、マリアが母アンナの膝に座っている点だ。親子でありながら二人は年齢差をほとんど感じさせず、聖アンナは静かな微笑みを浮かべて二人を見守っている。レオナルドはこの主題を一度で決めたわけではなく、1499年頃から構想を重ね、素描や別構図のカルトンを残しながら長期間かけて発展させていった。ルーヴル所蔵の関連素描からも、その試行錯誤の長さがうかがえる。
幼子が抱こうとする子羊は、後に犠牲となるキリスト自身を暗示する存在として読まれてきた。マリアはその子を引き戻そうとするようにも見えるが、アンナは静かにその場面を受け入れている。愛情に満ちた家族像の中に、将来の受難まで重ねられているところが、この作品の大きな特徴である。
また、背景の幻想的な山岳風景と、輪郭を煙のようにぼかすレオナルド特有のスフマートによって、人物と風景の境界まで柔らかく溶け合っている。作品はレオナルドの死まで手が加えられていたと考えられ、完成・未完成を単純に分けるより、長年にわたって改良され続けた作品と見る方が実態に近い。
『大航海時代 Online』のクエスト名「変わった構図の聖母子画」は、まさに核心を突いている。聖母子だけでなく、その母アンナまで一つの身体の流れに組み込み、三世代の愛情とキリストの運命を同時に描いた。レオナルドが約20年にわたって考え続けた構図そのものが、この絵最大の発見なのである。

