クエストシリーズ「ダ・ヴィンチ=コード」#1
補足
レオナルド・ダ・ヴィンチ作の絵。聖アンナの膝にマリアが座り、幼いイエスを抱こうとしている。アンナはマリアの母であるが、ここではマリアと同じくらいの年齢で描かれている。この絵は未完成だそうだ。
考察
聖アンナと聖母子は、聖母マリア、その母である聖アンナ、そして幼子イエスをひとつの画面に描く主題である。聖アンナは聖書本文には登場しないが、中世以降のキリスト教世界ではマリアの母として信仰を集めた。三世代をひとつの家族として表す構図は、ドイツ語で「アンナ・ゼルプドリット」と呼ばれ、15世紀から16世紀にかけてヨーロッパ各地で広く描かれるようになった。
この主題が好まれた背景には、聖母マリアの誕生や純潔をめぐる信仰の高まりがある。聖アンナを加えることで、幼子イエスだけでなく、その母マリアへと続く血縁そのものが画面の中心になる。宗教画でありながら、母と娘、そして孫という身近な家族像として表現できるため、荘厳さと親密さを同時に持たせられる題材でもあった。
ルネサンス期にはレオナルド・ダ・ヴィンチもこの主題に長く取り組み、現存する素描やカルトン、ルーヴル所蔵の絵画へと発展させている。人物をただ並べるのではなく、身体の動きや視線を絡ませて一つのまとまりとして見せることで、三世代のつながりそのものを構図にした。聖アンナと聖母子という主題は、信仰の対象であると同時に、家族の結びつきをどう描くかという画家たちの大きな挑戦でもあった。

